古い写真の中に、祖父母が昭和二十年代に暮らしていた家の写真が数葉ある。
狭い土間に立派な鳥籠が幾つも並んでいる。
叔父にこの写真を見せ、こういうのにうちの父さんは影響受けたのかな?ときくと、
「いや、この時期アニキは仕事してたから、家にはいないよ。」と。
これらの籠を祖父は近所の建具屋に作らせて、カナリアなんかを飼っていたそうだ。
すると叔父は思いつめた表情で語りだした。
この場所は台所でもあったので、おふくろがな、ここで七輪に火をかけて魚を焼いていたんだよ。
勝手口をちょっとだけ開けて、換気しながら。
俺は学校から帰ってきて、荷物を置いて、すぐに外へ遊びに行ったんだ。
その時、まあ何も考えずに、バシーンって戸を閉めてな。
暗くなってから家に帰ると、親父が肩を落として座っているんだ。
全部死んだんだよ、ここにいた鳥たち。なんにも言わなかったな、親父。
そういえば、子どものころ夏休みに祖父母の家に泊まりに行くと、スズムシだったり、彼地では珍しいクツワムシだったり(五月蝿いと悪評で翌年にはいなくなっていた)、何かしら飼育をしていた。スズムシは大きな水槽を幾つも並べて繁殖させていたので、年々その数は物凄いことになっていた。
同居して数年間はスズムシを飼っていたのだが、ある年、鳴き声がパッタリと聞こえてこなかったので、おじいちゃんスズムシ聞こえないね?と尋ねると、共食したんだわ、とそれっきりだった。以降、何かを飼育することはなくなったようだった。
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